童話『ごんぎつね』などで知られる新美南吉は、安城にゆかりの深い人物です。昭和13年4月、南吉は安城高等女学校の教員となり、英語・国語・農業を教えるほか、着任時に入学した19回生の担任として卒業までの4年間を受け持ちました。
この頃の南吉は作家としても充実した日々を過ごしており、昭和16年に初の単行本『良寛物語 手毬と鉢の子』が、昭和17年には童話集『おぢいさんのランプ』が相継いで出版されました。しかしながら同年11月頃から体調が悪化し、翌昭和18年3月22日に喉頭結核で29歳7ヶ月の生涯を閉じました。
南吉が安城で過ごした5年間は、教員という社会的地位を得て経済的に安定し、さらに教え子との交流から精神的にも充実していました。
この「安城時代」は、新美南吉がその短い生涯の中で最も輝いた時期ともいえるのです。